おもちゃ屋店主のacoです
精神保健福祉士×保育士の店主が綴る 仕事と子育ての話
その他の事

被災地ボランティアと「考え方の工夫」

こんにちは。

にじのおもちゃ屋Regenbogen店主のacoです。

元旦に起きた能登半島地震。

本来なら、華やかな言葉で綴られるこの時期に、被災された地域の方々のことを思うと、心が痛みます。

誰もが、「自分にできることはないだろうか」と考えたし、できる事を実行した方もたくさんいると思います。

私自身も、今していいこと、してはいけないこと、するべきこと、と考えながら過ごしてきました。

といっても、せいぜいできることは、募金や有益と思われる情報をシェアしたりするくらいで、できる事って本当に少ないな…と感じました。

「被災していない地域の人は、日常生活を送り続けることが大切」という言葉にも、“そうだよね”という思いの一方で、“本当にそれだけでいいのだろうか”と不安にもなりました。

不安になったところで、できることがないので仕方ないのですが…。

そんな思いを抱えながら1週間近く過ごしてきて、昨日ふっと目に入ったのが『考え方の工夫』という松浦弥太郎さんが書いた本でした。

これは、5年ほど前、私がまだ公務員だった時代に買った本です。

帯の「仕事とは親切とまごころと工夫」という言葉に惹かれて読み始めました。

しばらく手に取ってなかったこの本を、なんとなく久しぶりに読みたくなりました。

そして、ふっと開いたページ。

いまは「人に尽くしたい」という若い人が増えていて、「社会貢献をしたい」という声もしばしば耳にします。

僕が少し気になるのは、その社会貢献の多くが、「大きくて遠いこと」であるという点。例えば、災害が起きた地域でボランティア活動をするとか、殺処分されている犬や猫を救いたいとか、いわゆる「社会の大きな問題」に興味をもち、何かしようとしている若い人が多い事です。

被災地にボランティア活動に行くことはすばらしいことだし、僕も動物が大好きで、命が軽く扱われない社会にしたいと思います。

それでも「社会貢献=いま、社会で起きている大きな問題」という捉え方には首をかしげることが多いのです。

社会貢献とは、もっと身近なものではないでしょうか?

世の中で、ごく普通に暮らしている生身の人たちに尽くす。これも社会貢献です。普通の人の困りごとを減らして、いまよりもっと元気にすれば、その人たち一人ひとりがボランティア活動や社会的な活動をしたりするゆとりができるかもしれません。

自分がボランティア活動に行く、動物の殺処分反対の集会に行くという「一人の活動」よりも、大きな動きを作り出せる可能性があります。

「社会貢献をしたい」そう考えるのは良い事ですが、もっと考え方の工夫が必要です。

社会貢献とはなんなのか?社会とはなんなのか?

「社会」という大きなかたまりをつくっているのは、普通の人、一人ひとりです。そこまで考えることなく、大きなことをしようとすると、なかなかうまくいかない気がします。

「世の中の人を助け、しあわせにすること」誰にも共通するヴィジョンがあるとしたら、これしかないと僕は思います。

(中略)

世界は国でできているし、国は地域でできているし、地域は家族でできているし、家族は人でできている。社会貢献のような「大きなこと」は、小さく分解して考えてみよう。

「考え方の工夫」松浦弥太郎

被災地の方々に対して、できる事がない…と思っていた今の自分に、とても必要な言葉に感じました。

すごくシンプルなことで、もしかしたらみんな知っていたのかもしれないけど、私はハッとしたんですよね。

今の自分にできることは、目の前にいる人に心を尽くして、その人を幸せにすること。それが、巡り巡って被災地に届くこともある。

“本当に日常生活を送るだけでいいのだろうか”という不安が、すっと消えた気もしました。

私が、今目の前にいる人の悩み事を解決したり、誰かを幸せにすることが、まわりまわって「社会貢献」につながる可能性があることは、ハチドリの水のように、小さな行動かもしれないけど、希望の光のように思えたんです。

もちろん、今食料や生活用品が足りない状況や、今もまだ安否がわからない人たちが多くいる状況で、被災地に直接出向いて活動してくださるプロの方々には本当に頭が下がる思いだし、今後街を立て直すには、たくさんの人たちの力が必要になると思います。

お金ではなくて、人の手が必要になる局面も、この先きっとたくさんありますよね。

だけど今、多くの方が直接被災地に行ったり、支援ができない中で、それでも私たちが心を込めて、“世の中で、ごく普通に暮らしている生身の人たちに尽くす”ことが被災した人たちへの支援につながっているとしたら。

少しだけ、勇気がでてきませんか。

日頃から、丁寧に心を込めて仕事しようと思っていたけれど、より一層、目の前にいる人を一人ひとり大切にしたいと思いました。

その人の幸せが、別の誰かにめぐっていくかもしれない。

その人の悩み事が解決したら、別の問題が解決するかもしれない。

仕事じゃなくても、きっといいんです。

松浦さんが“世界は国でできているし、国は地域でできているし、地域は家族でできているし、家族は人でできている。”とおっしゃるように、家族を幸せにする、これも「社会貢献」につながっている。

誰か一人でも、今日ほんのちょっと幸せにすることが出来たら、それが「社会貢献」。

さて、今日はにじのおもちゃ屋はお休みです。

1日をゆっくりこども達と過ごせるので、大切な時間を過ごしたいと思います。

今日は、こどもたちを少しでも幸せにできるといいな。そして、今日これから出会う人たちに、少しでも心を配れたらいいなと思います。

もちろん、被災した方への思いを、心にとどめて。

少しでも、誰かの何かの役に立てますように。