私が学生時代から、何度も何度も繰り返し読んでいる「子どもへのまなざし」。
児童精神科医の佐々木正美先生が書かれた本です。
「子どもへのまなざし」「続 子どもへのまなざし」「完 子どもへのまなざし」の3巻が出版されています。
書店に行っても、絵本コーナーの片隅に、保育関係書の片隅に、よく見かけるようになりました。
私は、20年近く前に保育士の母から勧められて読み始めたのですが、
内容がとても温かく、当時結婚も出産もしていない私でも、なんだか涙が出てきた記憶があります。
子ども時代に本当は自分がかけてほしかった言葉。気づかなった思い。今、子どもと関わる生活を送っていなくても、子どものときにかけてほしかったまなざしが、ここにはあります。そういうものを、佐々木先生は丁寧にすくって肯定してくれる感じがしました。
内容は、子どもの発達についてを中心に、家族や家族をとりまく環境についても書かれています。
以下、目次を抜粋させていただきます。
- 乳幼児は人格の基礎をつくるとき
- 子どもをとりまく社会の変化
- 人と育ち合う育児
- こんな気持ちで子育てを
- 生命との出会い
- 乳幼児期に人を信頼できると子どもは順調に育つ
- 子どもの望んだことを満たしてあげる
- 幼児期は自立へのステップの時期
- しつけは繰り返し教えること、そして待つこと
- 思いやりは身近な人とともに育つ
- 子ども同士のなかで生まれるもの
- 友達と学び合う時期
- 思春期は自分さがしの時期
- 豊かな社会がもたらしたもの
- 保母さん幼稚園の先生へ
- お母さんへ、お父さんへ
「子どもへのまなざし」自体は、1998年7月に初版が発行されているので、社会情勢はそこからさらに進んでいるものがありますし、保育士を保母さんと呼ばれるなど、少し時代にはそぐわない部分があるかもしれませんが、基本的な社会の変化の流れについては参考になると思います。
児童精神科医の医師である佐々木先生ですが、言葉がとてもわかりやすく、児童心理や発達に知識のない方でも、具体的にイメージして理解できるように書いてあります。
私が「乳幼児期の子ども」にこだわるのは、この本の影響が大きいと思っています。
この本の最初のパートは「乳幼児期は人格の基礎をつくるとき」から始まります。
佐々木先生は、基礎の大切さをしばしば建物に例えられるそうです。
乳幼児期の育児というのは、建物でいうまさに基礎工事。
そのあとの時期を小学校、中学校、高校、大学、留学etc.というのは建物の部分。
小学校や中学校ぐらいが床や柱かもしれないし、高校ぐらいになると外装の工事とか屋根の瓦かもしれない、と例えています。
留学なんていうのは、内装工事やあるいはカーペットか家具かもしれないと。
そして、「そう考えると、あとからやるものほど、やり直しがきく」とおっしゃっています。
ただ、人の目に留まるのは、あとからやったところです。「どこどこ大学を卒業した」「留学にいった」なんてことに「すばらしいですね」と称賛をもらう。床をめくって基礎工事に関心を持つ人はほとんどいないのです。
だけど、いちど事があったときに、基礎工事がどれくらい建物の命運をけっするかということは、誰でも想像ができるのです。
もちろん、後からのやり直しができないと言っているわけでありませんが、後からやり直そうと思うとその分本人も周りも大変な思いをすることが多いのだということです。
そして、私が日々心に刻んでいることと言えば、
子どもにとって、保護者はあくまでも子を保護する人であって、教育者ではない。 親がしてやれるのは、子どもに優しくしてあげることだけ。
ということ。
多くの親御さんが、自分の子どもにどんな子になってほしいかと聞かれると、「思いやりのある子」「優しい子」「他者を思いやれる子」などという答えが返ってくるそうです。
もちろん、私も子どもには「自分を大切にし、他者を思いやれる子」になってほしいと思っています。
子どもが色々お話できるようになったり、一人でできることが増えてくると、ついつい目に見える成長(例えば、ひらがなが読めるとか、数字が数えられるとか、○○ができる!的なもの)を期待している自分がいませんか?
でも、本当になってほしいのは「思いやりのある子」なんですよね。
では、その「思いやりのある子」とは、どうしたら育つのか。
それはもう、親がその子に思いやりを与えることなのだ、ということです。
大人になったわが子が、人のために優しくしてあげる、誰かの気持ちを思いやれる、そういうことができたら、親としては何にも代えがたい幸せじゃないかと思います。
そしてそれは、その子自身の幸せにつながっているはず。
甘やかしてばかりで大丈夫?と心配になる方へ向けて、「過保護」と「過干渉」の違いについて書かれていたり、子どもにとって大切な「母性性」と「父性性」についても、理論立てて書かれています。
その基礎工事の時期について、どのような気持ちで子どもと関わるのが良いか、どんなことに気を付けておくべきか、やさしくも頼りがいのある言葉で教えてくれます。
かくいう私も、わが子がもっと小さい時、今から教育をすれば天才になるんじゃないか、とか恥かしながら考えていました。(この本を何度も読んでいたのにも関わらず!)
言葉では、健康でいてくれればいいって言いながら、心の底では、東大に行くような頭のいい子になるかもしれない、なんて期待してたんですよね。
だけど、毎日一緒に子どもと過ごしていくうちに、「この子は、こういう遊びが好きなのか」「この子は、こんな性格なのか」という感覚がわかってくると、その時すべきことが「早期教育」ではないことが、なんとなくわかりました。
そして、私自身がその「教育」をすることが、とてもしんどく感じてしまいました。
もちろん、大人からすると「教育」に見えることが、子ども自身の夢中になる「遊び」である事もあるので、教育的行為を否定するつもりは全くありません。
ただ、保護者が子どもをしっかり見つめて、その子が望んでいることを与えてあげることが、本当に重要なことなんだろうなと思います。
それが、佐々木先生の言う「子どもへの優しさ」なんだろうなと思っています。
まぁ、宿題なんかを一緒にやっていると、つい「何度も教えたよね?」的な気持ちになったり、「ここは、こうなるからこう!」みたいな、熱が入って、どうしても教育者になってしまう未熟者の私です・・・。
家族ですから、毎日一緒にいると我が子でも憎たらしく思えたり、自分自身に余裕がなかったりする日もあります。
でも、一緒にいられる時間のなかで、目の前の「この子」を見つめて、望んでいることをしっかり受け止めることが、今の私にできること。
いつもこの本に立ち返って、目の前の我が子を見つめなおすきっかけにしています。
佐々木正美先生の本は、「子どもへのまなざし」だけでなく、たくさんたくさん出版されています。
もっと薄くてさらっと読めるものもありますので、ぜひぜひ、手に取っていただきたいです。